- Windows Timeline は対応が簡単な割に得られる物が大きい
- ただ、アプリにより向き不向きがある
Windows Timeline、最近のWindows 10 Insider Preview で使えるようになりました。UWP App をこのWindows Timelineに対応させる開発者向けガイドも出ています。今回自分のApp を対応させる機会があり、作業量が少ない割には効果が大きかったので紹介しようという趣旨の記事です。
※この記事には続きがあります。
App を Windows Timeline に対応させる 2/2
Windows Timeline とは
Windows 10 の次期大規模更新(RS4?)に入ると言われている新機能です。2018年1月時点では Insider Preview Build 17063 で使うことが可能です。アプリではWebブラウザ Edge、フォト等が対応しています。宣伝になりますが、拙作の画像掲示板ブラウザ F10 も対応しています。
F10 Image bbs browser
https://www.microsoft.com/store/apps/9nblggh1ntrd
なお、API 自体はWindows 10 Fall Creators Update (FCU) から入っており、SDKもFCUレベルの16299から既に対応しています。このため、現時点でもWindows Timeline 対応アプリをビルドし、ストアに上げることが可能になっています。
Windows Timeline タスクバー左から3番目のアイコン、またはWin+Tabで表示されます |
※以降、仕組みについては推測込みです。ウソが混じっているかもしれません。またIP 17063 の動作を元に書いているため、今後変わるかもしれません。
対応に必要な作業と得られる効果
仕組み・方法を説明する前に、得られる効果を書きましょう。Timeline に対応するためにアプリ側でやる事は主に二つで、
- 適切なタイミングでUserActivityをOSに投げる
- Protocol Activation …Uriを使った起動・アクティベーションに対応する
前者はかなり楽に済みます。後者は…アプリに依るのですが、いわゆるブラウザ系、URLのように文字列一本でアプリの状態を記述できる場合は楽に対応できるのではと思います。ここは後でまた触れます。
これらを行うだけで、アプリの操作履歴の同期がデバイス間で、OS組み込みの洗練されたUIで可能になります。PC+ノート+タブレット…PC複数持ちが当たり前の昨今、簡単に作業状態をデバイス間で引き継げるのは使ってみると大変に便利です。
この操作履歴の同期、Timeline無しで自分でやるのは結構手間でして…
- Roaming Folder を使ってデバイス間で同期する…Appの履歴DBから一部をRoamingFolderに書き出し、変更を検知してDBに取り込む等
- Project Romeを使う…リモートデバイスを列挙し履歴データを送受信する仕掛けをRemote AppServiceで作る
等を行う事になります。どちらもある程度安定動作させるにはそこそこ工数がかかります。拙作のブラウザ F10ではこの両方を実装してあるのですが、それに比べると今回のUserActivity を使ったWindows Timeline への対応は圧倒的に簡単、そしてユーザビリティは優れています。お得過ぎる。
右上の検索ボックスからインクリメンタルサーチが出来ます。便利。 検索対象になるのはVisualElements.Title と Appの名前で、AdaptiveCardの中は見てくれないようです。 この例ではVisualElements.Titleにスレ名+板名+BBS名をまとめて登録していますが、表示しているのはAdaptiveCard になっています。 |
同じMicrosoft Account を使うデバイスにFall Creators Update のシステムが居る場合、 UserActivityはこのようにActionCenter上に表示されます。 クリックするとTimeline同様にAppが起動します。 FCUから登録したUserActivityは、他の17063 システムのTimeline上に表示されます。 |
他のデバイスで登録されたUserActivityは、右上にそのデバイス名が表示されます。 |
Windows Timeline の仕組み
アプリケーションはOSに対し、自分の状態を「UserActivity」という単位で投げます。
OSはそのアプリ毎の「UserActivity」を時系列に並べて表示します。それが「Windows Timeline」です。
ユーザーがWindows Timeline 上のタイルをクリックすると、OS はUserActivity内のプロパティ ActivateUri をパラメータにしてアプリを起動又はアクティベートします。
UserActivityを「どのタイミングで」OSに投げるかはアプリ設計者に任されています。Webブラウザなら新しいタブを開いた、Officeならドキュメントを開いた、という操作の節目でUserActivityを発行するものが多いようです。
OSは、この投げられたUserActivity を一台のローカルマシンだけではなく同じMicrosoft Account でログインしている複数のシステムで共有します。この同期、Project Rome と呼ばれる Microsoft Graph ベースの仕組みを使っているようです。このため、Microsoft Graph に対してRESTで直接叩く事により、プラットフォーム非依存で使う事が可能…というように見えます(ただ、Timeline の「表示」自体は別にアプリが必要でしょう。Android ならば Microsoft Launcher あたりが適任っぽいですが。また、Rome系のAPIはGraph上だとBeta扱いのが多いので使っていいのか少し微妙)。
UserActivity
UserActivity、色々プロパティはついているのですが、まずは一発表示してみたい時に必須なのは以下二つです。
- UserActivity.ActivationUri … Appをアクティベートするときに使うUri
- UserActivity.VisualElements.Title 名前 表示・検索に使われます(後述のAdaptiveCardを使う場合表示はそちらになる)
ActivationUri は一番大事なもので、ユーザーがTimeline 上のタイルをクリックするとOSはこれを使ってAppを起動します。
UWP Appでは、App 毎に独自のActivation Protocol をOSに登録することが出来ます。
例えばF10 が入っている環境ですと、Win+Rの名前をつけて実行、で
ddlgf10://a.4cdn.org/a/thread/166549698.json&view=post
とするとF10が起動し、そのスレが開きます。
これは、
- OSは ddlgf10:// をプロトコルとして認識し、(AppxManifestで指定する)
- パラメータをF10に渡し、
- F10 はOnActivate でそれを受け取り処理する(というコードを自分で書く)
という仕組みになっています。Windows Timeline はこのActivationUriを含むオブジェクトUserActivity を折々のタイミングでOSが記憶し、リストとして表示するという仕掛けになります。
Timeline への向き・不向き
上で説明したように、このTimeline の核は
- アプリの状態…アプリが使うリソースも含めて…が、一行のUri で示される
事にあります。これが出来ないアプリの場合、あまり役に立てる事ができないです。
例を挙げると、
・F10 の場合… これはブラウザアプリです。Web上の画像掲示板のスレッドを取得し、XAMLでレンダリングします。
このため、アプリの状態は「表示するスレのURL」+「F10上の表示形式オプション」で完全に記述することが可能です。
そしてこれは、システムユニークでは無く…どのシステムでも共通に(ネットに繋がれば)使用可能です。リソースはネット上のスレだからです。
・画像ブラウザの場合
例えばピクチャライブラリ上の画像 hoge.jpg を表示する場合を考えます。これをURLとして持ち、UserActivityとして登録する事は可能でしょう。ただ、このリソースはローカル…このデバイス上でのみ参照可能であるため、他のデバイス上でUserActivity をWindows Timeline に表示する意味がありません。
こういう場合、Timeline 上に表示するActivity としては不適切かもしれません。
逆にリソースがクラウド上にある場合…例えば画像がOneDrive上にある場合はTimelineで扱うにはピッタリでしょう。
他にもブックリーダー等、OneDriveとTimelineとの食い合わせはかなり良いです。OneDrive上の本のUri+リーダーでの読書位置、を合わせた物をUriとしてUserActivityに入れれば、かなり良い感じになりそうです。
・ゲーム
ゲームの場合、状態をマシンAからBにポンと渡して引き続き遊べるのは魅力かもしれません。ただ、状態の区切りをどこに置くかという問題と、状態をUriとして一本にシリアライズできるのかという。Uri が長さどれくらいまで行けるのかはわかりませんが、あまり無理はしない方がいい気はします。
次の記事では、F10 を Windows Timeline 対応させた実作業の様子をコード例を挙げて書いてみます。
App を Windows Timeline に対応させる 2/2
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